蛙は 大きなお鍋の前に立っていた


お鍋の中には お湯がぐつぐつと煮たっている





蛙は 鍋の底からぶくぶくとたつ泡を見て


こくりとうなずいたら


大きなさじを持ってきて


鍋から 大きな玉をすくいあげた




大きな玉は きらきらと光っていた



でも ガラス玉のように硬いものではなく


柔らかくふんわりと軽い・・・




すくいあげた玉は 水をはった大きな桶の中へ


とっぷんと 落とされた




玉は ゆっくりと桶のそこへたどり着いた




蛙は さじを置くと


桶の中へ手をいれて


玉をむんぎゅとにぎりしめた



むぎゅ むぎゅ 


むぎゅ


むぎゅ 




そのたびに ふんわりと 甘い香りがただよって


あっという間に あたり一面


その香りで埋め尽くされた




そして 


蛙は 水から手を出した



その手の中には 小さな玉が きらっと光った


それを 小さな葉っぱで包むと 箱に詰めた



蛙は 次から次へと 小さな玉を取り出しては


葉っぱで包んで 箱へと詰めた




あっという間に 箱は 葉っぱの包で一杯になった




最後の一つは 包まずに 大きな口を開けて


下の上にのせて ころころと玉を動かして 


楽しんだ





けろけろっと なくと


どこからか たくさんの蛙たちがやってきて


葉っぱに包まれた玉を


それぞれが 鞄に詰めて 


持っていってしまった




蛙は うれしそうに その後ろ姿をみている







蛙は 葉っぱの中で 夢をみていた






ねこじゃらしの裏庭  目次






蛙は ますます食べなくなった・・・


窓辺で外を見ることもなくなった・・・


あれから やはりご飯は届けられず


そしてあの雨粒のあめを ぺろぺろと舐めているだけになってしまった




猫は 姿を見せず


見かけそうなところも 探したけれど 会えなかった・・・




そして


ある日の朝・・・



蛙は 机の上で倒れていた


ただ 苦しそうな感じではなかった・・・


ゆっくり 呼吸をしている・・・


寝ているのか・・・?



私が 手にのせると 目を開けた


口をぱくぱくと動かすと


何かを催促しているように感じたので


残っていた雨粒のあめを口に入れてあげた




口の中でそっと とかしながら


目を閉じた・・・




しばらく手の上で温めてあげると


寝息をたてて 寝てしまった・・・




しばらくして葉っぱの上に戻してみると


葉っぱの中へゆっくりと入っていった。




それから


蛙は 外に出てこなくなった・・・







ねこじゃらしの裏庭  目次










雪が降った次の日


玄関に毎朝置かれていた蛙のごはんは


なかった




猫はどうしたんだろうか・・・




でもその日は お昼ごろに届けられていた




ただ いつもよりも 


多めに・・・




蛙は


窓の外を見る日が多くなって


うっすらと目をつぶった目からは


涙がこぼれていることも多くなって






雪の降った次の日


ご飯が多めにあったことを


蛙に教えてあげた




多かったのを喜ぶかと思ったら


蛙の目に 涙があふれた


ぽろぽろ ぽろぽろ・・・


一つ食べて ぽろぽろ・・・


二つ食べて ぽろぽろ・・・



次の日から 一日 一つづつ食べるようになった・・・



その日から


ぱったりと ご飯が置かれていることは 無かった・・・





猫 どうした・・・?



蛙は 何かを察したかのようだったけど・・・









ねこじゃらしの裏庭 目次









最近の蛙は


少し部屋にもなれたのか


私がいない間は


壁を器用によじ登って


桟のところでくつろいだりしているみたい




猫は


たまに道端であうけれど


何もなかったかのように


前を通り過ぎていく・・・





蛙の食事は


いつも朝に玄関のドアの前に置かれているものを


あげているけれど


たぶん 猫が用意をしてくれているんだろう



私がお箸でつまんだ虫を


ぱくっと口をあけて食べていた


飲み込むときにごくんと音がするかのように


のどが動く・・・



虫と一緒に用意されていたのは


あの雨粒のあめだった



お皿に置いておくと


いつの間にかなくなっているので


自分で食べているみたい



お腹の傷跡は すこし肌がねじれてはいるけれど


しっかりと傷口はふさがった


もう少し 内側だったら おへそみたいなのに・・・





ある日 初雪が降ってきた・・・


家に帰ると蛙が窓辺に座って庭を眺めていた・・・







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今朝は 


夜の間に降った雨で


空気はしっとりとしていた




そのせいか 


陽はまぶしく光り


いろいろなものに反射していた・・・



屋根と庭の金木犀の枝に


くもの巣がはってあって


雨のしづくがきらきらとついていた



くもも くもの巣も きらいだけれど


この様子は とても美しい



このくもの巣の主が


金木犀の葉の間から 


顔を出してこちらをうかがっているようだ



くもは もう一張りしている巣の方へ


移動して行った


そして


巣の糸を ぷるんと爪弾いた



きらきらとした雨粒が


くもの巣から 落ちていく・・・




地面に敷き詰められた枯葉の上に落ちて


ぱら ぱらぱらぱらんと


音をたてた・・・




くもの巣に目をやると


くもはどこかへ行ってしまった後だった







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